レンタルスペースの収支は、毎月一定額が引かれる家賃という固定費に左右されます。家賃の高い物件では、稼働率が上がるまで赤字が続くため、「家賃の安い物件」を探すことは収支を安定させる第一歩です。ただし、ただ安いだけの物件では、需要のない立地で売上が立たず逆効果になることもあります。本記事では、①損益分岐点(家賃比率)から毎月払える家賃の上限を逆算する方法、②空き店舗・居抜き・穴場など家賃の安い物件の探し方、③大家との賃料交渉とフリーレントの実務、④敷金・礼金・仲介手数料など初期費用の削減ポイントを、実際に使える手順と数字で解説します。
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レンタルスペースの収支を決める「家賃=毎月の固定費」|家賃の上限は損益分岐点から逆算する
まず「毎月いくらまで家賃を払えるか」を数字で決めてから物件を探すのが、失敗しない順序です。
家賃は毎月必ず引かれる固定費(レンタルスペースの収支構造)
レンタルスペースのコストは、開業時の初期費用と毎月かかる固定費に分けられ、固定費の中心が家賃です。物件が1日も貸せない月でも家賃は発生するため、「稼働率が上がるまで耐えられる家賃」を前提に物件を選びます。
ここで重要なのは、家賃を「物件の値段」ではなく「毎月一定額が引かれる固定費」と捉えることです。家賃が月1万円違えば、1年で12万円の固定費が変わります。
家賃の上限を損益分岐点から逆算する2ステップ
家賃の上限は、損益分岐点(売上と費用がトントンになるライン)の考え方から逆算します。手順は次の2ステップです。
ステップ1は、月間の想定売上を決めることです。貸出枠×1枠あたりの料金×想定稼働率で計算します。仮に1日3枠、1枠1万円、稼働率50%、月25日営業なら、3枠×1万円×50%×25日=月約37万5千円です。開業直後は稼働率が伸び悩むため、想定は控えめにします。
ステップ2は、想定売上×家賃比率の目安で家賃の上限を出します。上の例なら37万5千円×3割=約11万2千円が上限です。これを超える物件は、想定を下回る月が続くと赤字になりやすいため、判断基準にします。
なお、想定稼働率で本当に借りられるかは、Spekanの売上・稼働率をリアルタイムに可視化するレポート機能で、実際のデータと突き合わせると検証しやすくなります。
家賃比率の目安と「稼働を見込める物件」の意味
売上高に対する家賃の割合を「家賃比率」といいます。小売・飲食など家賃が固定費の中心になる業種では、家賃比率を3割前後までに抑えるのが一般的な目安です。ただしレンタルスペースは人件費が少ない分、立地や稼働率、その他の固定費次第では、もう少し高めでも成立する余地があります。自分のケースでは、上の2ステップに数字を当てはめて判断しましょう。
ここで押さえたいのは、「家賃が安い」だけでは物件の価値にならない点です。家賃比率の計算は「その物件で稼働を見込めるか」が前提で、需要のない立地では、家賃が安くても売上が立たず、損益分岐点を超えられません。稼働を見込める物件の範囲で安い物件を探す順番が基本です。
家賃の安い物件の探し方|空き店舗・居抜き・穴場の3系統
家賃の上限が決まったら、その範囲で安い物件を探します。安い物件は「空き店舗・商店街」「居抜き物件」「上層階・地下・駅徒歩圏外などの穴場物件」の3系統に分けられます。
まず「需要がある場所」かを見極める(安さと稼働のバランス)
家賃が安いのは需要が少ない場所であることが多いため、安さだけで選ぶと稼働せず赤字になるリスクがあります。次の観点で需要を確認しましょう。
- 想定する利用者(会議・撮影・ワークショップなど)がそのエリアから来るか
- 同じエリアに同種の施設が既にどれだけあるか(供給過多になっていないか)
- 駅・駐車場・交通手段など、利用者がアクセスしやすいか
- 同種施設の予約が埋まっているか、空いているか
実際に曜日・時間帯を変えて街を歩く、不動産ポータルで同種施設の料金と空き状況を確認するなど、一次情報で裏取りしましょう。

空き店舗・商店街の物件(相場が低く交渉余地が大きい)
空き店舗は家賃相場が低めで、貸主側が入居者を探しているため、賃料交渉を受け入れてもらいやすい傾向があります。空室が長く続いている物件ほど交渉の余地が広がります。商店街や自治体が空き店舗情報を掲載する窓口を設けているケースもあるため、物件探しの選択肢に入れましょう。
注意点は、店舗物件としての用途制限や消防基準をクリアできるか、前テナントの設備(水回り・電気容量)がレンタルスペースに使えるかです。詳細な契約確認は別記事の範囲ですが、内見時に転貸・用途制限の確認ができる物件かを見ておきましょう。
居抜き物件(内装費を抑えて実質負担を下げる)
居抜き物件とは、前テナントの内装・設備がそのまま残っている物件です。内装工事費(初期費用の大きな項目)を抑えられるため、実質の負担を下げられます。カフェ・店舗・事務所・美容室などの居抜きは水回りや電気容量が整っていることが多く、レンタルスペースへの転用に適しています。
ただし、前テナントの造作(間仕切り・設備)が自分の用途に合うかは物件ごとに確認が必要です。使わない設備の撤去には費用がかかります。居抜きならではの契約条件(造作の帰属・設備の引き継ぎ)も契約前に確認しましょう。
上層階・地下・駅徒歩圏外などの穴場物件(安い理由と注意点)
上層階・地下・駅から離れた場所は、通りがかりの客を期待する一般的なテナントには敬遠されるため、家賃が低めに設定されています。レンタルスペースは事前予約で来場する利用者が中心なら、駅近や1階である必要は必ずしもありません。リピーターやWeb予約での集客を前提にできるなら、穴場物件は有力な選択肢です。
一方、地下は湿気・換気・防音、上層階は搬入やエレベーターに制約があります。駅徒歩圏外は通りがかりの客を見込めない分、Web・SNSでの集客の工夫が必要で、安さの代わりに負う「集客の手間」を織り込んで選びましょう。
賃料交渉で家賃を下げる実務ポイント(フリーレント・値引き)
掲載の家賃は最終条件ではありません。大家側の事情が合えば、値引きやフリーレントを受け入れてもらえるケースがあります。成立は物件とタイミング次第で保証はできませんが、ポイントを押さえると可能性は高まります。
賃料交渉が成立しやすい条件(空室の長期化・大家側の事情)
賃料交渉が受け入れられやすいのは、次のようなケースです。
- 空室が長く続いている、募集期間が長期化している
- 大家側が早期の入居を望んでいる
- 相続や売却を控えて安定した収入を確保したい
空室が続くと家賃収入が入らないうえ、管理費や固定資産税の負担も続くため、大家側にとって「1ヶ月でも早く入居してもらう」ことが利益になるケースでは、交渉が成立しやすくなります。逆に、入居希望者が複数いる人気物件では交渉の余地は小さくなります。
交渉の進め方(相場資料・「対価」の提示・複数の引き出し)
賃料交渉は「安くしてください」と伝えるだけではなく、提案型で進めるのが効果的です。
まず、同じエリアの類似物件の賃料を集めて相場資料を用意し、周辺相場との比較を根拠として示します。次に、大家側にメリットのある「対価」をセットで提示します。具体例は次のとおりです。
- 契約期間を2〜3年にする長期契約を提示する
- 数ヶ月分の家賃を一括前払いする
- 更新料の免除と引き換えに賃料を下げてもらう
- 入居時期を早める(即入居を前提にする)
「賃料の値引き」と「フリーレント」など、複数の引き出しを用意して1つの条件に固執しないのもコツです。交渉の結果は口頭で済ませず、見積書や条件書などの書面で残しましょう。
フリーレントの条件と注意点(契約期間の延長・解約条項)
フリーレントとは、入居後一定期間の家賃が免除される制度です。空室の長期化で募集に苦労している物件では、1〜3ヶ月程度のフリーレントが認められることがあります。家賃を実質的に下げる効果があり、開業直後の負担を減らせます。
ただし、フリーレントには次のような条件が付く場合があるため、契約前に確認しましょう。
- フリーレントの分だけ契約期間が延長される場合がある
- 期間中に解約すると、免除分の家賃を追徴される条項がある場合がある
- 共益費や消費税は免除の対象外になる場合がある
条件は契約書や重要事項説明の書面で確認しましょう。

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初期費用を削減するポイント(敷金・礼金・保証金・仲介手数料・内装)
初期費用と毎月の家賃は別物ですが、総コストとしてはセットで考える必要があります。家賃が安くても初期費用が重ければ開業資金の負担が大きくなります。初期費用の各項目について、削減・交渉のポイントを押さえましょう。
初期費用の内訳と「削れる項目」(仲介手数料は賃料1ヶ月分が上限)
レンタルスペース開業時の初期費用は、主に次の項目で構成されます。
- 敷金・礼金・保証金(保証会社を利用する場合は保証料)
- 仲介手数料
- 内装工事費
- 設備・備品の購入費
このうち仲介手数料には法律上の上限があります。宅地建物取引業法に基づく告示では、賃貸借の媒介報酬は、標準的な契約の場合、借主と貸主の双方から受け取る合計額が賃料1ヶ月分(消費税別)を超えてはならないとされています。この上限を超えて報酬を請求することは、宅地建物取引業法第46条に反します。上限を超える請求を受けた場合は、妥当な金額かを確認しましょう。(出典:国土交通省「不動産流通について」)
敷金・礼金は、物件や地域によっては交渉の余地があります。礼金は地域の慣行によるもので、エリアによっては0円の物件もあります。保証会社の利用有無や保証金の減額も交渉材料になります。
内装費を抑える3つの方法(居抜き・部分工事・相見積もり)
初期費用の中で金額が大きくなりがちなのが内装工事費です。次の3つの方法で抑えましょう。
- 居抜き物件を選ぶ:内装工事費を大幅に削減できます(前章で詳述)
- 部分工事に絞る:全面改装ではなく、壁の塗装・照明・コンセント追加など必要な箇所だけ施工します。内装の見た目より、清潔さ・防音・設備の充実が稼働に影響します
- 相見積もりを取る:工事業者から複数の見積を取って比較します。工事範囲を明確に提示し、曖昧な追加工事を防ぐことも大切です
開業当初は使わない設備を作らないのもポイントです。会議室想定なら机・椅子・Wi-Fi・電源・プロジェクター程度から始め、需要を見て追加する方が初期費用を抑えられます。
敷金・保証金・原状回復の交渉と確認
敷金・保証金は、退去時の原状回復費用の担保として預けるものです。契約前に、金額だけでなく返還条件を確認しておきましょう。
特にトラブルになりやすいのが原状回復の範囲です。レンタルスペースとして使うことによる壁の傷や設備の摩耗と、経年劣化の線引きは、契約書の記載だけでは曖昧な場合があります。「通常の使用による劣化は借主の負担としない」などの合意を、契約前に書面で残しておきましょう。原状回復の詳細なルールは別記事の範囲です。
固定費を下げて家賃負担を抑える運営の工夫
家賃の安い物件は郊外や人通りの少ない立地になりがちです。そうした物件を収益化するには、家賃以外の固定費も下げ、固定費全体の割合を抑える運営が重要です。
家賃とセットで見直す固定費(人件費・システム利用料・光熱費)
固定費は家賃だけではありません。人件費・予約システムの利用料・光熱費・清掃費を合算して、売上に対する固定費全体の割合(固定費率)で考えると、家賃の許容範囲も正確に見えてきます。
中でも人件費は削減余地が大きい項目です。受付・鍵の受け渡し・決済対応は人手がかかりやすく、稼働が増えるほどスタッフの負担も増えます。光熱費は利用時間帯に合わせて空調・照明を管理するなどでコントロールできます。家賃が安い物件でも、固定費の合計が大きければ家賃比率の計算が崩れるため、家賃とセットで見直しましょう。
無人運営と予約システムの活用(Spekanの予約管理・決済・スマートロック連携・稼働率レポート)
受付スタッフを常駐させる運営では、家賃を下げても人件費が固定費を圧迫します。予約管理・オンライン決済・スマートロック連携による無人運営にすれば、受付業務と人件費を削減できます。
Spekanには、24時間のWeb予約受付とダブルブッキングを防ぐ予約カレンダー、クレジットカードによる事前決済(取りこぼしや無断キャンセルの削減)、スマートロック連携による鍵の受け渡しの無人化、売上・稼働率をリアルタイムに可視化するレポート機能があります(出典:Spekan公式サイト)。低家賃の物件と省人化を組み合わせれば、固定費率を下げて、家賃の安さをそのまま収益性につなげられます。
まとめ|家賃の上限を決めてから物件を探す
家賃の安い物件を見つけるには、次の流れで進めましょう。
この記事のまとめ
- 家賃を「毎月一定額が引かれる固定費」と捉え、家賃比率(売上に占める家賃の割合)の目安3割前後から、毎月払える家賃の上限を逆算する
- 安い物件は空き店舗・商店街、居抜き、上層階・地下・駅徒歩圏外の3系統。それぞれ「なぜ安いか・何が安くなるか・注意点」を確認し、需要(稼働)を見極めてから選ぶ
- 賃料交渉は、空室の長期化など大家側の事情が合えば成立しやすい。長期契約・前払いなど「対価」をセットで提示し、値引きとフリーレントを組み合わせて交渉する
- 初期費用は、仲介手数料(賃料1ヶ月分が上限)・内装費(居抜き・部分工事・相見積もり)・敷金礼金保証金をそれぞれ削減し、毎月の家賃と合わせた総コストで判断する
よくある質問
Q. レンタルスペースの家賃は売上の何割までが目安ですか?
A. 家賃は毎月一定額が引かれる固定費の中心で、売上(貸出収入)に占める家賃の割合を家賃比率といいます。一般的な目安として、家賃比率を3割前後までに抑えるのが安全とされます。ただしレンタルスペースは人件費が少ない分、立地や稼働率、その他の固定費次第ではより高めでも成立する余地があります。自分のケースでは「家賃の上限を損益分岐点から逆算する2ステップ」に数字を当てはめて計算しましょう。
Q. レンタルスペースの物件はどこで探せばいいですか?家賃の安い物件はありますか?
A. 家賃の安い物件には、空き店舗・商店街物件、居抜き物件、上層階・地下・駅徒歩圏外などの穴場物件があります。空き店舗については、商店街や自治体が空き店舗情報を掲載する窓口を設けているケースもあるため、物件探しの選択肢に入れましょう。詳しくは「家賃の安い物件の探し方|空き店舗・居抜き・穴場の3系統」をご覧ください。
Q. レンタルスペースの賃料を大家さんに交渉して安くしてもらうことはできますか?
A. 賃料交渉は可能です。特に空室が長く続いている物件や、大家側が入居を急いでいる物件では、交渉が受け入れられやすい傾向があります。交渉を成立させるには周辺相場の資料を用意し、長期契約や前払い、更新料の免除など、大家側にもメリットのある「対価」をセットで提示すると効果的です。詳しくは「賃料交渉で家賃を下げる実務ポイント(フリーレント・値引き)」をご覧ください。
Q. フリーレントとは何ですか?何ヶ月もらえるものですか?
A. フリーレントとは、入居後一定期間の家賃が免除される制度です。空室の長期化で募集に苦労している物件では、1〜3ヶ月程度のフリーレントが認められることがあります。ただし、フリーレントの分だけ契約期間が延長されたり、期間中に解約すると免除分の追徴を求められる条項がある場合もあるため、契約前に条件を確認しましょう。詳しくは「フリーレントの条件と注意点(契約期間の延長・解約条項)」をご覧ください。
Q. レンタルスペースの開業で初期費用を抑えるにはどうすればいいですか?
A. 初期費用を抑えるには、内装費(居抜き物件・部分工事・相見積もり)と、仲介手数料(賃料1ヶ月分が上限。それを超える請求は宅地建物取引業法に反します)、敷金・礼金・保証金(交渉の余地や地域差がある)のそれぞれで削減・交渉する方法があります。詳しくは「初期費用を削減するポイント(敷金・礼金・保証金・仲介手数料・内装)」をご覧ください。
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監修者情報
望月 直紀
約10年にわたり、無人施設の運営やスマートロック関連の業務に携わる。自身でも複数の施設運営を経験し、予約管理や無人運営、収益改善など、施設運営の実務に従事。現場で感じた「業務効率化だけでなく、利益向上まで支援できる仕組みが必要」という課題をもとに、施設運営向け予約管理システム「Spekan」を立ち上げる。施設運営・無人化・予約管理に関する実務経験を活かし、記事を監修。
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