レンタルスペースで料理教室やケータリング、カフェ併設などの利用を受け入れたい場合、最初に確認すべきなのが保健所(食品衛生法)の手続きです。結論からいうと、運営者が調理して客に提供する場合は原則として「飲食店営業許可」が必要になり、許可業種に該当しない食品の取り扱いでも「営業届出」が必要になるケースがあります。この記事では、許可・届出・手続き不要の3区分と判断の軸、飲食店営業許可の取得手順、施設基準のポイント、場所貸し運営者が注意したい借り手の無届営業対策までを、2021年6月施行の改正食品衛生法に基づいて解説します。
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調理・飲食を伴う利用で保健所への手続きが必要になるケース
食品衛生法では、食品の製造・加工・調理・販売などを行う営業について、保健所(自治体)への手続きが必要とされています。レンタルスペースで調理・飲食を伴う利用を受け入れる場合、この手続きが「自分のケースで必要になるのか」をまず整理しましょう。

保健所の手続きは「許可・届出・不要」の3区分
2021年6月1日に施行された改正食品衛生法では、営業許可制度の再編と営業届出制度の創設が行われました(出典:厚生労働省「食品衛生法の改正について」)。これにより、保健所の手続きは次の3区分に整理できます。
| 区分 | 対象となるケース | 手続きの内容 |
|---|---|---|
| 営業許可 | 飲食店営業など、食品衛生法施行令の別表第一で定められた営業 | 管轄保健所へ申請し、施設検査を受けて許可を取得する |
| 営業届出 | 許可業種以外で食品の製造・加工・調理・販売などを行う営業 | 保健所へ営業開始までに届出を行う |
| 手続き不要 | 届出不要とされた営業 運営形態 調理する人 提供先 手続きの目安 カフェ併設・料理教室の試食 運営者自身 来場した客 飲食店営業許可が原則必要 施設外へのケータリング 運営者自身 施設外の客 営業形態により許可・届出の対象になり得るため、管轄保健所に確認 借り手が調理・販売 借り手(利用者) その場の客 手続きの主体は借り手。貸し手は借り手の手続きを把握する 既製品の販売のみ 誰も調理しない 来場した客 営業届出または手続き不要の区分を確認 常温で長期保存できる包装食品の販売のみなど |
特になし |
「許可が要らないケース」と「届出だけで足りるケース」の区別は分かりにくいため、各章で詳しく見ていきます。
判断の軸は「誰が調理し、誰に提供するか」
3区分のどこに当たるかは、「誰が調理するか」「誰に提供するか」「対価を受け取るか」の3つの軸でおおよそ判断できます。
| 運営形態 | 調理する人 | 提供先 | 手続きの目安 |
|---|---|---|---|
| カフェ併設・料理教室の試食 | 運営者自身 | 来場した客 | 飲食店営業許可が原則必要 |
| 施設外へのケータリング | 運営者自身 | 施設外の客 | 営業形態により許可・届出の対象になり得るため、管轄保健所に確認 |
| 借り手が調理・販売 | 借り手(利用者) | その場の客 | 手続きの主体は借り手。貸し手は借り手の手続きを把握する |
| 既製品の販売のみ | 誰も調理しない | 来場した客 | 営業届出または手続き不要の区分を確認 |
この区分はあくまで目安です。食品の種類・提供方法・施設の構造によって判断が分かれるため、最終的には管轄保健所への確認が必要です。
飲食店営業許可が必要になるケース
運営者が業として食品を調理し客に提供する場合は、対価の有無にかかわらず「飲食店営業許可」の対象になり得ます。参加者が自ら調理して食べるだけの料理教室などは扱いが異なる場合があるため、提供方法を管轄保健所へ説明して確認しましょう。
飲食店営業とは(喫茶店営業の統合と「調理」の定義)
飲食店営業は、食品衛生法施行令で定められた許可業種の一つで、飲食店において食品を調理し、客に提供する営業を指します(出典:厚生労働省「営業許可業種の解説」)。ここでいう「調理」に当たるかは、提供する食品が「その場で客に提供されるもの」か「短期間で消費されるもの」かが判断の基準になります(出典:厚生労働省「営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設に関するQ&A」)。
注意したいのは、2021年6月の改正で「喫茶店営業」が飲食店営業に統合された点です。旧制度の情報をもとにした「喫茶店は別の許可が必要」という説明は現在では誤りで、カフェ・喫茶を併設する場合も飲食店営業許可の手続きになります(出典:厚生労働省「営業許可業種の解説」)。
簡易な飲食店営業は施設基準が一部緩和される
飲食店営業のうち、加熱調理を伴わない簡易な営業(既製食品の盛り付け・飲料の提供のみなど)は、施設基準の一部が緩和されます(出典:厚生労働省「営業許可業種の解説」)。たとえば、専用の調理施設を求められない場合などです(出典:厚生労働省「施設基準の解説」)。
ただし、緩和される基準の範囲は営業の内容と自治体の条例によって異なります。飲料の提供のみのカフェを併設する場合でも、該当するかは管轄保健所に確認しましょう。
無償提供・料理教室の試食も対象になり得る
「無償だから許可は不要」とは限りません。運営者が業として食品を調理・提供する場合は、対価の有無にかかわらず飲食店営業許可の対象になり得ます。一方、参加者が自ら調理して食べるだけの料理教室などは扱いが異なる場合があり、規模・継続性・提供方法に応じて判断されます。
自分の運営形態が許可の対象になるかは、事前相談の段階で保健所に確認するのが確実です。酒類を提供する場合の手続きも、あわせて確認しましょう。
営業許可が不要でも「営業届出」が必要なケース
「許可がいらない=何もしなくていい」ではありません。許可業種に該当しない食品等事業者は、原則として営業届出が必要です。
営業届出の対象となる営業
2021年の改正で創設された営業届出制度では、許可業種以外で食品の採取・製造・加工・調理・貯蔵・運搬・販売などを行う営業が届出の対象になります(出典:厚生労働省「営業届出制度の創設」)。レンタルスペースでいえば、次のようなケースが考えられます。
- 冷蔵・冷凍保存が必要な包装食品を販売するコーナーを常設する(許可業種に該当しない場合)
- 生鮮食品や手作りの惣菜を販売する(許可業種に該当する場合は許可の対象)
届出も不要な営業(手続き不要のケース)
一方、次のような営業は届出も不要とされています(出典:厚生労働省「営業届出制度の創設」)。
- 常温で長期保存できる包装食品の販売のみを行う営業
- 食品の貯蔵・運搬のみを行う営業
- 食品の採取のみを行う営業(農林水産業など)
「販売のみ」の範囲や長期保存できる食品の判断は自治体によって差があるため、迷ったら管轄保健所に確認しましょう。イベント・マルシェでの臨時出店の扱いも自治体によって大きく異なります。出店予定の自治体の保健所に確認してください。
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飲食店営業許可の取得手順(保健所への申請から許可まで)
許可を取得する流れは、「事前相談→申請→施設検査→許可交付」です。開業スケジュールに余裕を持たせるため、物件を決める段階から動き始めましょう。
事前相談で自施設の区分と設備を確認する
まず管轄保健所に事前相談をします。ここで確認するのは、次のような項目です。
- 自施設の運営形態が許可・届出・不要のどの区分になるか
- 施設基準(後述)を満たせるか、工事が必要か
- 提供予定の食品・客席数・営業時間など、申請に必要な条件
管轄保健所は、施設の所在地を管轄する保健所です。東京都の場合は、所管の保健所が申請・相談の窓口になります(出典:東京都保健医療局「食品関係営業許可と届出」)。自治体によって窓口の名称や運用は異なるため、所在地の自治体の案内を確認しましょう。
申請書類と提出のタイミング(工事完了予定日の10日くらい前まで)
申請は、施設の工事を伴う場合は工事完了予定日の10日くらい前までに提出するのが目安です(出典:東京都保健医療局「営業許可・届出の様式」)。必要な書類の例は次のとおりです。
- 営業許可申請書
- 施設の構造及び設備を示す図面2通
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの
- 水道水以外の水を使用する場合は、水質検査成績書
申請事項には、食品衛生責任者の氏名・資格やHACCPの取組の別なども含まれます(出典:厚生労働省「営業許可業種の見直し」)。書類の提出は、保健所への窓口申請のほか、厚生労働省の「食品衛生申請等システム」によるオンライン申請が可能な自治体もあります(出典:東京都保健医療局「食品関係営業許可と届出」)。
施設検査から許可交付までと更新手続き
申請が受理されると、保健所による施設検査が行われます。施設の構造・設備が基準を満たしていることを確認できれば、許可が交付されます。
許可には有効期間が定められており、期間は自治体の条例により異なります。更新(継続申請)は、東京都の案内では許可の満了の約1か月前までに申請するのが目安です(出典:東京都保健医療局「営業許可・届出の様式」)。営業内容の変更や廃業も、10日以内に届け出る必要があります(同)。審査に要する日数は自治体によって異なるため、開業予定日から逆算して、余裕のあるスケジュールを組みましょう。
食品衛生責任者の設置とHACCPに沿った衛生管理
許可の申請には、食品衛生責任者の設置が要件になります。資格の有無や養成講習の受講方法は自治体によって異なるため、管轄保健所に確認しましょう。
また、HACCPに沿った衛生管理が、原則としてすべての食品等事業者に義務付けられています(出典:厚生労働省「HACCP」)。規模や取扱い食品に応じて、「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」のいずれかで、衛生管理計画の作成と記録が求められます。届出不要とされる営業の一部は対象外とされています。許可を取得した後の運営にも続く取り組みなので、計画を立てるときに記録の仕組みも決めておきましょう。
レンタルスペースに求められる施設基準のポイント
許可を取得するには、施設が食品衛生法に基づく施設基準を満たす必要があります。レンタルスペースで特に確認したいポイントを整理します。
共通施設基準の主な項目
許可業種に共通する施設基準(共通基準)の主な項目は、次のとおりです(出典:厚生労働省「施設基準の解説」)。
- 給水設備(水道水または基準に適合する水)
- 流水式手洗い設備
- 排水設備
- 換気設備
- 防鼠・防虫設備
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 照明・採光
このほか、業種ごとの基準(調理場の広さ・構造など)も定められています。既存のキッチン設備を共用するレンタルスペースでは、共用部分の設備が基準を満たすか、改修が必要かを見極めることがポイントになります。
住居・他用途スペースとは物理的に区画する
居住の用に供する部分(住居の台所など)と営業の用に供する部分は、物理的に区画することが求められます(出典:厚生労働省「営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設に関するQ&A」)。自宅の一部をレンタルスペースにする場合や、オフィス・倉庫と併用する場合は、区画の方法(壁・扉などの有無)を事前に確認しましょう。
基準は自治体の条例で定められる
施設基準の詳細は、食品衛生法で自治体の条例に委任されており、自治体ごとに異なります(出典:厚生労働省「施設基準の解説」)。手数料・有効期間・審査日数も同様です。この記事では自治体別の具体値は扱いません。管轄保健所の案内に従って確認しましょう。
場所貸し運営者が押さえたい「借り手の無届営業」対策
場所と設備を貸すだけの運営なら、運営者側の許可は不要なことが多いです。一方で、借り手の無届営業というリスクには注意が必要です。
貸し手に許可は不要でもリスクが及ぶケース
スペースを貸すだけの場合、調理・提供の手続きの主体は借り手(利用者)です。しかし、借り手が無届のまま食品を販売すると、行政指導の対象になり得ます。スペースを貸した側も、施設の利用実態を把握していなかったことで、保健所への説明や対応を求められる可能性があります。
たとえば、ケータリング事業者が借りたスペースで食品を調理・販売する場合、手続きの要否は営業形態によって異なります。借り手の営業実態まで貸し手が把握するのは難しいため、予約時の確認と記録の運用が重要になります。
利用規約と予約管理でできる対策
借り手の無届営業を防ぐための具体的な対策は、次のとおりです。
- 利用規約に「食品を調理・販売する場合は、必要な許可・届出を取得し、その旨を事前に申告する」という条項を入れる
- 予約時に利用目的(調理・販売の有無、人数、時間帯)を確認する
- 予約者情報と利用記録を保存する
- 不明な点は管轄保健所に確認する
このうち「予約時に利用目的を確認し、利用者情報と利用記録を残す」運用は、予約管理システムで実現しやすい作業です。Spekanの予約管理・顧客管理機能を使えば、予約時の利用目的の確認や利用者情報の記録を、予約データとあわせて残す運用ができます。許可を取得して飲食提供を始める場合も、営業時間や利用者の把握、衛生管理・清掃の記録など運営負担が増えるため、予約受付や決済の自動化は課題を解決する手段の一つになります。まずは、自施設の運用に合わせて記録のルールを決めるところから始めましょう。
この記事のまとめ
- 保健所の手続きは「営業許可」「営業届出」「手続き不要」の3区分で、「誰が、どのような形で、継続して調理・提供するか」などの営業実態で区分を判断する
- 運営者が業として調理し客に提供する場合は、対価の有無にかかわらず飲食店営業許可の対象になり得る。参加者が自ら調理して食べるだけの場合などは扱いが異なるため、保健所へ確認する。2021年6月の改正で喫茶店営業は統合され、簡易な営業は施設基準が一部緩和される
- 許可取得は「事前相談→申請(工事完了予定日の10日くらい前まで)→施設検査→許可交付」の流れ。書類・手数料・有効期間・審査日数は自治体により異なるため、管轄保健所に確認する
- 場所貸し運営者は、借り手の無届営業に備えて利用規約・予約時の利用目的確認・記録管理を行う
よくある質問(FAQ)
Q. レンタルスペースで調理した料理を客に提供する場合、保健所への届出や許可は必要ですか?
A. 運営者が調理して客に提供する場合は、原則として保健所の「飲食店営業許可」が必要です。許可業種に該当しない食品の取り扱いは、営業届出が必要なケースと、手続き不要となるケース(常温で長期保存できる包装食品の販売のみなど)に分かれます。まず「誰が調理し、誰に提供するか」で区分を判定しましょう。詳しくは「調理・飲食を伴う利用で保健所への手続きが必要になるケース」をご覧ください。
Q. レンタルスペースにカフェを併設する場合、どの許可が必要ですか?
A. 飲食店営業許可が必要です。2021年6月の食品衛生法改正で喫茶店営業は飲食店営業に統合されました。飲料の提供のみなど簡易な営業は施設基準が一部緩和されますが、該当するかは管轄保健所の確認が必要です。詳しくは「飲食店営業許可が必要になるケース」をご覧ください。
Q. 借りたスペースで料理を販売する場合、許可を取るのは貸す側と借りる側のどちらですか?
A. 食品を調理・提供して対価を得る「営業者」、つまり借りる側(提供する側)が手続きの主体になります。貸す側は場所と設備を貸すだけなら保健所への許可は不要なことが多いですが、借り手の許可の有無を利用規約や予約時の確認で把握する運用が重要です。詳しくは「場所貸し運営者が押さえたい『借り手の無届営業』対策」をご覧ください。
Q. 保健所への申請はいつまでに済ませるべきですか?
A. 施設の工事を伴う場合は、工事完了予定日の10日くらい前までに申請書類を保健所へ提出し、施設検査を受けたうえで許可が交付される流れが標準です(東京都保健医療局の案内による一例)。自治体によって手続きの詳細や期間が異なるため、物件を決める段階での事前相談が確実です。詳しくは「飲食店営業許可の取得手順(保健所への申請から許可まで)」をご覧ください。
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監修者情報
望月 直紀
約10年にわたり、無人施設の運営やスマートロック関連の業務に携わる。自身でも複数の施設運営を経験し、予約管理や無人運営、収益改善など、施設運営の実務に従事。現場で感じた「業務効率化だけでなく、利益向上まで支援できる仕組みが必要」という課題をもとに、施設運営向け予約管理システム「Spekan」を立ち上げる。施設運営・無人化・予約管理に関する実務経験を活かし、記事を監修。
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