レンタルスペースのターゲットは、思いつきで選ぶのではなく、物件の立地・広さ・防音・利用時間帯という制約と、周辺の需要を突き合わせて1つに絞り込みます。ターゲットが決まれば、整える設備の優先順位と、広告を出すチャネルも自ずと決まります。本記事では、代表的なターゲット5類型と各類型の特性、決め方の3ステップ、設備・広告の考え方、開業後に予約データで仮説を検証・修正する運用まで、実際に使える手順として解説します。
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レンタルスペースのターゲット設定が重要な理由
レンタルスペースの成否は、「誰に貸すか」で大半が決まります。ターゲットが設備投資・広告費・価格設定の3つの判断基準になるためです。
ターゲットが曖昧だと何が起きるか
ターゲットを決めずに開業すると、次の3つの失敗に陥りやすくなります。
- 設備投資が分散する:撮影・会議・練習・イベントのすべてを狙うと、照明もプロジェクターも防音も鏡も一通り揃えようとし、初期投資が膨らむわりに「どれも中途半端」な設備になります。どの利用者にも選ばれにくくなるのです。
- 広告が誰に届くかわからない:誰に向けた告知かが決まっていないと、広告の文言も掲載先も全員向けになり、予約につながらない層にだけ届いて費用がかさみます。
- 価格競争に巻き込まれる:似たような設備・立地の「誰にでも貸せる」スペース同士は、比較されても差が出ないため、値段で選ばれるしかありません。
「全員に貸せるスペース」を目指すほど、どの利用者からも選ばれにくくなる。これがレンタルスペース運営の逆説です。逆に、主ターゲットを1つに絞れば、設備・広告・価格の判断がすべてその利用者を基準に一本化されます。
利用目的の多様化が進むレンタルスペース市場
市場規模は拡大傾向にあります。2018年の貸会議室市場規模は698億円(前年比113.7%)で、主な用途は採用試験・就職説明会・社内研修・セミナー・株主総会でした(2018年時点の調査。出典:矢野経済研究所「貸会議室市場に関する調査」)。
一方で、法人以外の利用も増えています。仕事・勉強・レッスン・撮影など一人で日常的に使う「おひとりさま」利用が約2倍、5人以下の少人数パーティーが前年比1.7倍に増え、オンライン会議や撮影目的の利用も増えました(2020年時点の調査。出典:スペースシェア事業者による市場調査「スペースシェア・トレンド2020」)。
利用目的の選択肢が広がったからこそ、開業時点で「どの用途に振り切るか」を決める重要性は高まっています。
レンタルスペースの主なターゲット5類型
開業検討者が最初に押さえるべきは、代表的なターゲットと、それぞれの「運営条件の違い」です。主なターゲットは次の5類型に分けられます。
| ターゲット | 主な利用時間帯 | 単価の傾向 | リピート性 | 必要な設備の代表例 | 合う集客チャネル |
|---|---|---|---|---|---|
| 撮影・収録 | 平日日中〜夜間、週末 | 高め | 中〜高 | 照明・背景・消音・搬入導線 | SNS・制作会社への営業 |
| 会議・研修 | 平日日中 | 安定 | 中 | プロジェクター・ホワイトボード・高速Wi-Fi | リスティング・ポータル・法人営業 |
| 練習・教室 | 夜間・週末中心 | 中程度 | 高い(定期利用) | 防音・鏡・フロア・音響 | 地域の紹介・チラシ・MEO |
| イベント・パーティー | 週末・祝日中心 | 1回あたり高め | 低い(単発) | テーブル・椅子・音響・調理設備 | ポータル・SNS・口コミ |
| 仕事・オンライン会議 | 平日日中+早朝深夜 | 中程度 | 高い(日常利用) | 高速Wi-Fi・電源・個室感・防音 | 検索エンジン・MEO・SNS |
撮影・収録ターゲット
動画撮影・写真撮影・ポッドキャスト収録・ライブ配信などが該当します。平日日中の空き時間を活用しやすく、時間単価は比較的高めで、長時間利用も見込めます。機材を持ち込むため、照明・背景・消音に加えて、荷物の搬入導線・電源の容量・傷や汚れへの許容度が運営条件になります。制作会社やクリエイターは定期的に撮影するため、一度実績ができると継続利用につながりやすい一方、こだわりの強い利用者が多い点に注意しましょう。
会議・研修ターゲット
法人の会議・打ち合わせ・研修・採用イベントが該当します。平日日中の時間帯が主戦場で、時間単位の予約が中心、大人数向けの面積が求められます。プロジェクター・ホワイトボード・高速Wi-Fi・座席数が選ばれる判断基準になります。法人との取引は決裁までに時間がかかりますが、一度つながると定期利用につながりやすく、安定した稼働の土台になります。
練習・教室ターゲット
バンド・ダンスの練習や、ヨガ・ピラティス・語学などの教室が該当します。夜間と週末に需要が集中し、同じ曜日・時間帯を定期予約する傾向があります。防音・鏡・フロア・音響が必須に近い設備です。定期利用は回数券や月額プランで固定化しやすく、稼働率の土台になります。通える範囲が限られるため、地域密着の集客が基本になります。
イベント・パーティーターゲット
誕生日会・交流会・セミナー・プライベートビューイングなどが該当します。週末・祝日中心で、1回あたりの金額は高めですが、単発利用が多く新規獲得を続ける必要があります。テーブル・椅子・音響・調理設備が求められます。写真や動画で「どんなイベントができるか」を見せられるかが、集客の成否を左右します。
仕事・オンライン会議ターゲット
テレワークの仕事場・オンライン会議・オンライン面接・勉強などの利用が該当します。平日日中に加え、早朝や深夜の時間帯にも利用されます。高速Wi-Fi・電源・個室感・防音が条件になり、一人で短時間から使うため、予約から入室までの流れがスムーズかどうかがリピートに直結します。
ターゲットの決め方3ステップ
ターゲットの決め方は「物件の制約から候補を絞る→周辺の需要を確認する→収益性で1つに絞る」の3ステップが基本です。

STEP1 物件の制約から候補を絞る
最初に、自分の物件の制約を4つの軸で書き出します。
- 立地:駅前・繁華街は法人や撮影利用が集まりやすく、住宅街・郊外は練習・教室・地域利用が中心になります。
- 広さ:大人数イベントには相応の面積が必要で、ひとり・少人数利用なら小部屋でも成立します。
- 防音:防音がない物件で音楽練習は成立しません。逆に防音がある物件は撮影・会議・仕事利用でも強みになります。
- 時間帯:建物の入退館時間や騒音規制があれば、早朝・深夜利用のターゲットは候補から外れます。
具体例を挙げると、駅近・防音なしのワンルーム1室なら撮影・仕事利用・少人数会議が候補になり、住宅地の1階・防音完備なら練習・教室・イベントが候補になります。物件契約上の用途制限もあわせて確認しましょう。この段階で、成立しないターゲットは候補から外せます。
STEP2 周辺の需要と競合を調べる
次に、周辺の需要を確認します。予約プラットフォームで、同じエリアにどんなスペースが何件あるか、平日と週末のどちらで埋まっているかを調べましょう。競合の空き状況は「その地域にどのターゲットの需要があるか」の観察データになります。あわせて、オフィス街か住宅街か、駅・学校・商業施設の位置など、周辺環境を実際に見て回り、法人・個人どちらの利用者が生活圏にいるかを確認します。この調査は1週間程度かけて行うと、曜日による違いも見えてきます。
STEP3 収益性で1つに絞る
残った候補を、収益性で比較して1つに絞ります。比較の軸は「1日何回転できるか」「1回の単価の傾向」「稼働しやすい時間帯」の3つです。あわせて、季節による需要の波(撮影・イベントの繁忙期と閑散期など)も確認しておくと、1年を通した収益の見通しを立てやすくなります。
例えば、平日日中だけが主戦場の会議・研修ターゲットは、夜間と週末の時間が空きます。この空き時間をどうするかをあわせて考えないと、収益の上限が低くなります。自分の運営スタイル(清掃・立ち会い・対応できる時間帯)との一致も確認しましょう。どうしても1つに決められない場合は、次の「主ターゲットと副ターゲットの使い分け」で時間帯の重なりを避けます。
主ターゲットと副ターゲットの使い分け
主ターゲットは「稼働率と売上の中心になる利用者」、副ターゲットは「空き時間を埋める利用者」と定義します。設備の投資順位は主ターゲットが先で、副ターゲットは主ターゲット向けの設備で対応できる範囲に留めます。時間帯が補完関係にある組合せが望ましく、例えば平日日中を会議・研修、夜間と週末を練習・教室と分けると、設備の干渉が少なく済みます。逆に、同じ時間帯を狙う2つのターゲットを同時に設定すると、設備も予約も中途半端になるため避けましょう。予約受付のルール(時間帯による区分など)もこの段階で決めておきます。
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ターゲット別の設備の考え方
ターゲットが決まったら、その利用者が求める設備を優先順位付きで整えます。判断の基準は「予約が成立するために最低限必要な設備」です。
ターゲットが求める必須設備
ターゲット別の必須設備と、後付けでよい設備の一覧を示します。
| ターゲット | 予約成立に最低限必要な設備 | 後付けでよい設備 |
|---|---|---|
| 撮影・収録 | 照明・背景・電源容量・消音への配慮 | 本格的なスタジオ機材・撮影用小物 |
| 会議・研修 | 机・椅子・高速Wi-Fi・ホワイトボード | プロジェクター・大型モニター |
| 練習・教室 | 防音・鏡・フロア | 音響機器・レンタル備品 |
| イベント・パーティー | テーブル・椅子・清掃のしやすさ | 音響・調理設備 |
| 仕事・オンライン会議 | 高速Wi-Fi・電源・個室感 | モニター・デスク周辺機器 |
設備投資の優先順位と費用対効果の考え方
設備投資の基本は「必須設備を先に整え、需要が確認できてから追加投資する」ことです。後付けできる設備(備品・家電・モニター類)は、予約実績が出てから導入しても遅くありません。一方、防音工事や内装など後付けが難しい設備は、開業時に判断が必要です。追加投資の判断基準は、同じ利用者層からの予約が一定期間続いたか(例:3ヶ月で同じターゲットの予約が複数回入った)を確認してから、とすると無駄を防げます。需要が立証されていない設備への先行投資は、回収できないリスクを抱えることになります。
ターゲット別の広告・集客チャネル選び
広告費の考え方も、ターゲットが決まっていれば迷いません。「ターゲットが実際に情報を探す場所」に集中させるだけです。
ターゲットごとに合うチャネル
ターゲットと合う集客チャネルの対応は次のとおりです。
| ターゲット | 合いやすいチャネル | 理由 |
|---|---|---|
| 撮影・収録 | SNS・制作会社への営業 | 実績の写真・映像で伝わり、制作側がSNSで探す |
| 会議・研修 | リスティング広告・ポータルサイト・法人営業 | 法人は検索して比較する |
| 練習・教室 | MEO・地域の紹介・チラシ | 通える範囲が限られ、近隣との関係が効く |
| イベント・パーティー | ポータルサイト・SNS・口コミ | 単発利用が多く、発見される経路が必要 |
| 仕事・オンライン会議 | 検索エンジン・MEO | 「今すぐ使える個室」を検索する |
いずれのチャネルも、写真・設備情報・予約導線が整っていないと効果が出ません。チャネル選びと同じ重みで、掲載内容の見直しも行いましょう。
広告は仮説→施策→効果測定で回す
広告費を分散させず、最初は合いやすいチャネルを1〜2つに絞って出稿します。施策ごとに予約数・問い合わせ数を記録し、1ヶ月程度経過した時点で比較して、成果の出ていないチャネルはやめて別チャネルに振り替えます。あわせて、予約時に「何のために・どうやって知ったか」を利用者に聞き、記録しておくと、次の施策の仮説に使えます。効果測定のない広告は、単なる支出にしかならない点に注意しましょう。
予約データでターゲットを検証・修正する
ターゲットの仮説は、開業後に予約データで検証し、ズレがあれば修正します。ここが運用の要です。
予約データの見方(時間帯・曜日・リピート率)
見るべきデータは3つです。
- 時間帯・曜日の予約分布:想定したターゲットの主戦場どおりに埋まっているか確認します。
- リピート率:同じ利用者が何度借りているかで、定期利用の有無がわかります。
- 利用者属性:予約時や利用後に「何のために借りたか」を聞き取り、記録しておきます。
1〜3ヶ月分のデータをまとめて見ることで、仮説とのズレが見えてきます。
仮説と実績のズレの修正方法
例えば「会議・研修が主になる」と想定したのに、実際は撮影利用が多い場合、次の3方向から修正します。
- 設備:撮影向けの照明や背景を優先的に追加する
- 予約導線:予約ページの写真・文言を撮影利用向けに変更する
- 掲載チャネル:撮影層が探すチャネルに広告を振り替える
修正のサイクルは3ヶ月程度を目安に回します。一度決めたターゲットを固定するのではなく、データに合わせて更新し続けるのが運用です。
予約システムでターゲット対応を自動化する
データの集計と予約の受け付けを手作業で続けると、時間がかかり、集計ミスのリスクもあります。予約管理システムを活用すると、この運用を自動化できます。例えば予約管理システム「Spekan」には、次のような機能があります。
- 売上・稼働率レポートと顧客管理:時間帯・曜日の予約傾向をレポートで確認でき、仮説検証の手間を省けます
- 公開予約ページ・LINE連携:SNSから流入した見込み客がそのまま予約でき、LINEでリマインドや再予約の案内を送れます
- 回数券・月額メニュー:練習・教室・仕事利用のような定期・反復利用のリピート化を仕組み化できます
- スマートロック連携・無人受付:早朝深夜の撮影・個人利用にも、24時間Web予約とあわせて人手をかけずに対応できます
レンタルスペースのターゲット設定で失敗しがちな3つの例
最後に、よくある失敗を3つ挙げます。いずれも「絞る→集中する→データで検証する」のサイクルで回避できます。
- 全員向けのぼやけたコンセプト:「どんな用途でも使えます」をうたうスペースは、どの利用者にも「自分のためのスペース」と映らず、比較対象になって価格で選ばれます。対策は、主ターゲットを1つ決めて、サイト・写真・文言をその利用者向けにそろえることです。
- 設備過剰投資:需要が立証される前に高額な設備を揃え、回収に時間がかかります。対策は、必須設備だけ先行して、予約実績が出てから追加投資することです。
- 広告チャネルの分散:あらゆる媒体に少しずつ出稿して、どの効果も測れず費用だけが膨らみます。対策は、1〜2チャネルに集中して予約数で効果を測り、振り替えることです。
この記事のまとめ
- ターゲットは「物件の制約→周辺の需要→収益性」の順に検証して、主ターゲットを1つに絞る
- 設備はターゲットの必須設備から優先順位をつけ、需要を確認してから後付けする
- 広告はターゲットに合うチャネルに集中し、予約数・問い合わせ数で効果を測って見直す
- 開業後は予約データ(時間帯・曜日・リピート率)で仮説を検証し、設備・予約導線・掲載チャネルを修正する
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よくある質問
Q. レンタルスペースのターゲットはどうやって決める?
A. 物件の制約(立地・広さ・防音・時間帯)からターゲット候補を絞り込み、予約プラットフォームや競合施設の調査で周辺の需要を確認し、回転数・単価・季節性で収益性を検証して、主ターゲットを1つに決める3ステップが基本です。詳しくは「ターゲットの決め方3ステップ」をご覧ください。
Q. レンタルスペースの主な利用者(ターゲット)にはどんな種類がある?
A. 撮影・収録、会議・研修、練習・教室、イベント・パーティー、仕事・オンライン会議の5類型に分けられます。それぞれ利用時間帯・単価・リピート性・必要な設備・合う集客チャネルが異なるため、自施設の条件に合う類型を選ぶ必要があります。詳しくは「レンタルスペースの主なターゲット5類型」をご覧ください。
Q. 撮影目的の利用者に必要な設備は?
A. 撮影・収録ターゲットには、照明や背景、消音への配慮、荷物搬入のしやすさなどが重視されます。設備はターゲットの必須設備から優先順位をつけて整え、需要が確認できてから後付けで追加する考え方が基本です。詳しくは「ターゲット別の設備の考え方」をご覧ください。
Q. ターゲットに合わせた広告・集客方法はどう選ぶ?
A. 撮影層にはSNSやビジュアル訴求、法人の会議・研修にはリスティング広告やポータルサイト、地域の練習・教室利用にはMEOや紹介が合いやすい傾向があります。広告費を分散させず、ターゲットに合うチャネルに集中して、予約数などの効果を測りながら見直すことが重要です。詳しくは「ターゲット別の広告・集客チャネル選び」をご覧ください。
Q. ターゲットを絞らないとどうなる?
A. 設備投資が分散してどれも中途半端になり、広告も誰に届くかわからないまま費用がかさみ、価格競争に巻き込まれやすくなります。全員に貸せるスペースを目指すほど、どの利用者にも選ばれにくくなるのがレンタルスペース運営の特徴です。詳しくは「レンタルスペースのターゲット設定が重要な理由」をご覧ください。
監修者情報
望月 直紀
約10年にわたり、無人施設の運営やスマートロック関連の業務に携わる。自身でも複数の施設運営を経験し、予約管理や無人運営、収益改善など、施設運営の実務に従事。現場で感じた「業務効率化だけでなく、利益向上まで支援できる仕組みが必要」という課題をもとに、施設運営向け予約管理システム「Spekan」を立ち上げる。施設運営・無人化・予約管理に関する実務経験を活かし、記事を監修。
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