清掃の外部委託を検討するとき、最初に気になるのは「相場はいくらか」です。しかし清掃の費用は、面積や回数といった作業量と、依頼する条件の組み合わせで決まるため、条件が違う見積りを並べても比較になりません。この記事では、委託の費用が何で決まるのかを整理したうえで、見積りを取る前に確定させる条件、複数の見積りを比べる方法、自社実施との比較のしかたを解説します。現場の清掃手順や、清掃の予定をどう管理するかは、それぞれ別の記事で扱います。
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この記事でわかること
- 清掃委託の費用が何で決まるか(作業量と条件)
- 見積りを取る前に確定させる条件と、伝えるべき内容
- 複数の見積りを、同じ土台で比べる方法
- 自社実施と比べるときの、時間の費用換算のしかた
- 委託を続けるか見直すかの判断と、見積りの取り直し
清掃委託の費用は何で決まるか
委託の費用を考えるとき、単価の水準だけを見ても判断できません。費用は作業量を単位に組み立てられるため、まず何を単位にしているかを押さえます。このセクションでは、費用の決まり方と、金額が動く要因を整理します。
費用は作業量(面積・回数・周期)で決まる
清掃の委託費用は、清掃する面積、清掃する回数、そして清掃の周期を単位に組み立てられます。公共建築物の保全業務の積算に使われる建築保全業務積算要領でも、清掃業務は対象面積を単位として、日常清掃と定期清掃の区分ごとに回数と周期を定める形で整理されています。この資料は原則として官庁施設の事務庁舎を対象としたものですが、費用が面積と回数の積み上げで決まるという考え方は、民間の施設でも同じです。

この構造を押さえると、見積りを見るときの見方が変わります。総額だけを見るのではなく、どの面積を、何回、どの周期で清掃する前提なのかを確認します。面積や回数の前提が違えば、金額が違うのは当然であり、単純に安い高いを比べることはできません。
【参考】国土交通省大臣官房官庁営繕部「建築保全業務積算要領 令和5年版」
費用が変わる要因
同じ施設でも、条件によって費用は変わります。まず頻度です。日常清掃の回数が増えれば、その分の作業量が増えます。次に、依頼する時間帯です。早朝や深夜、短い時間帯に作業を集中させる依頼は、人を集めにくくなるため条件が変わります。
依頼する範囲と水準も要因です。ごみの回収や床の清掃までを依頼するのか、水回りの清掃や備品の補充まで含めるのかで、作業量が変わります。建物や設備の条件も影響します。対象面積の広さ、階数や移動のしやすさ、利用の直後で汚れが集中しやすい時間帯があるかどうかで、同じ面積でも必要な時間が変わります。見積りの金額に差が出たときは、この要因のどこが違うのかを確認します。
見積りを取る前に確定させること
見積りを比較できるかどうかは、依頼する側がどこまで条件を決めているかで決まります。このセクションでは、見積りを依頼する前に確定させておく内容を整理します。

対象面積と清掃の回数・周期を出す
最初に出すのは、清掃の対象になる面積です。施設全体ではなく、清掃の対象になる範囲を対象ごとに分けて書き出します。部屋、水回り、共用部分のように分けておくと、依頼の範囲を変えたいときに、どの部分を増減するかを示せます。
次に、清掃の回数と周期を出します。利用者の入れ替えのたびに行う清掃は、予約の入り方から回数の見当がつきます。床の洗浄のように毎回は行わない作業は、月や年の単位で周期を決めます。回数と周期が分かれていると、日常清掃と定期清掃をそれぞれ別に依頼することもできます。
依頼する範囲と水準を決める
対象と回数が決まったら、どこまでを依頼するかを決めます。ごみの回収までか、床の清掃までか、水回りの清掃や備品の補充まで含めるのかで、費用の内訳が変わります。範囲を決めずに見積りを取ると、事業者ごとに前提が変わり、比較できない見積りが並びます。
仕上がりの水準も、依頼の内容として示します。利用の直後で汚れが残りやすい箇所、利用者から指摘が続いている箇所があれば、その箇所を重点として伝えます。範囲と水準を文章で示しておくと、契約後の認識のずれを減らせます。
依頼する時間帯と建物の条件を伝える
依頼できる時間帯は、施設の稼働と直結します。清掃に入れるのは、予約と予約の間の時間です。その時間がどの程度あり、時間帯が日によってどう変わるかを伝えます。1回あたりの作業に使える時間の上限が決まっていれば、見積りの前提が揃います。
建物の条件も伝えます。鍵の開け閉めの方法、エレベーターや搬入経路の有無、清掃用具を置ける場所、使える水道や電源の位置です。これらは作業の段取りに影響するため、伝えずに依頼すると、当日になって作業が進まない、追加の費用が生じるといったことが起きます。
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複数の見積りを比較する
条件を確定させたら、同じ条件で複数の事業者から見積りを取ります。このセクションでは、見積りを比べるときの手順を整理します。
見積りの単位をそろえる
見積りは、事業者によって示し方が違います。1回あたりで示す場合、1か月あたりで示す場合、面積あたりの単価で示す場合があります。総額だけを並べると、回数や周期の前提が揃っているかが分かりません。

比べるときは、自分が出した条件に合わせて、単位をそろえて示してもらいます。1か月あたりの総額、1回あたりの金額、面積あたりの単価のように、同じ土台に置き直すと、どの部分に差があるのかが見えます。単位をそろえる作業自体が、条件の確認になります。
単価以外に比べる項目
金額が同じでも、含まれる作業が違えば内容は変わります。見積りを比べるときは、次の項目を並べます。日常清掃に含まれる作業、定期清掃の扱い、消耗品や洗剤の負担、担当者の変更時の対応、作業の報告の方法です。
追加の条件も確認します。予約が急に増えたときの対応が可能か、その場合の費用がどうなるか、キャンセルや日程変更の扱い、担当者が急に来られないときの代替の有無です。これらを確認しておくと、後から費用が増える余地を把握できます。安い見積りが、結果的に手間や追加の費用を伴う場合もあります。
自社実施と比べる
委託の見積りが揃ったら、自分で行う場合と比べます。比較の相手を金額だけで置くと、判断を誤ります。このセクションでは、比較のしかたを整理します。
自社で行う場合の時間を費用に換算する
自社で行う場合、費用として現金は出ていきません。しかし、その作業に使う時間は、他の運営業務や本業に使えない時間になります。1回あたりの作業時間に月間の回数を掛けて、月に何時間を使うかを出します。

その時間を金額に換算する方法として、公表されている単価を使う考え方があります。建築保全業務労務単価は、公共建築物の保全業務の積算に用いる参考単価として年度ごとに公表されています。この単価は官庁施設を対象としたもので、民間施設の実際の委託料ではありませんが、自分の時間を評価するときの目安として使えます。換算した金額と委託の見積りを並べると、比較の土台がそろいます。
【参考】国土交通省「官庁営繕:建築保全業務労務単価」
費用以外の差
委託と自社実施の差は、費用だけではありません。委託した場合、作業の質は依頼した範囲と水準に沿って安定しやすくなります。担当者が決まっていれば、施設の状態を把握した状態で作業が続きます。日程の変更への対応や、急な依頼の受け方も、事業者によって条件が決まっています。
自社実施の場合、施設の状態を最もよく知っているのは自分であり、小さな変化に気づきやすいという利点があります。一方で、予定が重なったときに作業を動かせる範囲は自分と家族などに限られます。品質の安定と対応の速さのどちらを重視するかは、施設の利用のされ方によって変わります。
どちらを選ぶかの判断基準
判断の基準は、費用の差だけでは決まりません。まず、作業に必要な時間が、自分の他の業務と両立できるかを確認します。両立できない状態が続くなら、費用の差が小さくても委託を選ぶ理由になります。
次に、品質の要求水準を確認します。利用者からの指摘が続いている箇所がある、清掃の状態が予約や口コミに影響するといった場合は、作業が安定して行われることを優先します。逆に、予約が少なく作業の余裕がある時期は、自社で行う範囲を残す選択もあります。すべてを委託するか、すべてを自分で行うかの二択ではなく、日常清掃は委託し定期清掃は自分で行う、水回りだけ委託するといった組み合わせも検討できます。
委託を続けるか見直すか
委託は、始めたら終わりではありません。利用の状況は変わります。このセクションでは、見直しの判断を整理します。
見直しのタイミングと基準
見直しのタイミングは、あらかじめ決めておきます。契約の更新の時期、繁忙期の前後、利用者の指摘が続いたときの3つが目安です。更新の時期に合わせて確認すれば、条件の変更をまとめて相談できます。
見直しの基準には、費用の増減だけでなく、指摘の件数、作業の遅れの発生、依頼への対応の速さを含めます。見積り時の前提から利用の状況が変わっていれば、費用が同じでも内容が合っていない可能性があります。
条件が変わったときの見積りの取り直し
施設の使い方や予約の入り方が変わったら、前提が変わったことになります。対象面積が増えた、清掃の回数が増えた、依頼する時間帯が変わったという変化は、いずれも費用の前提を動かします。変化を伝えずに運用を続けると、作業が間に合わない、追加の費用が発生するという形で表面化します。
取り直しのときは、初回と同じ手順をたどります。対象面積と回数・周期を出し直し、範囲と水準を確認し、同じ条件で見積りを取ります。初回の見積りが残っていれば、どの条件が変わったのかを並べて示せるため、事業者との認識合わせが短くなります。
清掃の費用を運営の数字に組み込む|Spekanのご紹介
委託の費用は、清掃の回数と作業量で決まります。つまり、予約の入り方が変われば清掃の量も変わり、費用の前提も変わります。予約の状況と清掃の量を同じ場所で把握できると、見積りの前提を出す作業と、見直しの判断がしやすくなります。
Spekanは、レンタルスペース向けの予約管理システムで、予約管理・決済・顧客管理・スマートロック連携・無人運営支援を提供しています。清掃の費用の把握と関わるところでは、次の2点が検討を支えます。
- 予約データの活用:予約の入り方から清掃の回数の見当をつけ、見積りの前提を出せる
- 予約と清掃の時間の一元管理:予約と予約の間に清掃の時間を確保し、作業に使える時間を把握できる
機能の詳細や導入の流れは、公式サイトやマニュアルで確認できます。
まとめ|清掃委託の費用は作業量と条件で捉え、自社実施の時間と比べる
清掃委託の費用は、面積と回数、周期という作業量を単位に、頻度や時間帯、範囲と水準、建物の条件を加えて決まります。相場の金額を先に求めるより、自施設の条件を確定させてから同じ条件で見積りを取るほうが、比較の精度は上がります。
自社実施と比べるときは、かかる時間を金額に換算して並べます。そのうえで、品質の安定と対応の速さのどちらを重視するかを決めます。委託した後も、更新の時期と利用の変化を基準に見直し、条件が変わったときは同じ手順で見積りを取り直します。
この記事のまとめ
- 清掃委託の費用は、面積・回数・周期の作業量と、条件の組み合わせで決まる
- 見積りは、対象面積・回数・周期・範囲と水準・時間帯と建物の条件を確定させてから取る
- 複数の見積りは、単位をそろえ、含まれる作業と追加の条件を並べて比べる
- 自社実施と比べるときは、作業時間を金額に換算して並べる
- 更新の時期と利用の変化を基準に見直し、条件が変わったら見積りを取り直す
よくある質問
Q. 清掃委託の費用は何で決まりますか?
A. 清掃する面積、清掃する回数、清掃の周期という作業量を単位に、頻度、依頼する時間帯、依頼する範囲と水準、建物や設備の条件を加えて決まります。条件が違えば金額が違うのは当然なので、総額だけを比べても判断できません。まず自施設の条件を確定させてから、同じ条件で見積りを取ります。
Q. 自社で行うのと比べてどちらが得ですか?
A. 金額だけで比べると判断を誤ります。自社で行う場合は現金の支出はありませんが、その作業に使う時間は他の業務に使えない時間になります。1回あたりの作業時間に月間の回数を掛けて時間を出し、公表されている参考単価などを用いて金額に換算してから、委託の見積りと並べます。そのうえで、品質の安定と対応の速さのどちらを重視するかを決めます。
Q. 委託先を変えるときは何から始めればよいですか?
A. 条件の整理から始めます。対象面積、清掃の回数と周期、依頼する範囲と水準、依頼できる時間帯と建物の条件を出し直し、同じ条件で複数の事業者から見積りを取ります。初回の見積りが残っていれば、どの条件が変わったのかを並べて示せるため、認識合わせが短くなります。契約の更新時期に合わせて進めると、条件の変更をまとめて相談できます。
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監修者情報
望月 直紀
約10年にわたり、無人施設の運営やスマートロック関連の業務に携わる。自身でも複数の施設運営を経験し、予約管理や無人運営、収益改善など、施設運営の実務に従事。現場で感じた「業務効率化だけでなく、利益向上まで支援できる仕組みが必要」という課題をもとに、施設運営向け予約管理システム「Spekan」を立ち上げる。施設運営・無人化・予約管理に関する実務経験を活かし、記事を監修。
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